Art・Philosophy・Regionality

大阪から岡山に移住して10年の管理人によるブログ。哲学対話、地域の文化・芸術に関することをアップしていきます。

【アート】Hiroshima Art Document 2017

不思議な、展示でした。

 

会場に入ってまず目に飛び込んできたのは、壁一面のQRコード

それらは、Buiper Wareの映像作品群。

他の展示でよくある「見てみて、体験してみて!」というフレンドリーさはほとんどなく、ビジターは自ら能動的にQR-コードを読み込んで一つ一つ再生しなければ、映像を見ることができません。携帯を持ってない人はどうするんだろう?という懸念はさておき、まずこのビジュアルが独特で、猟奇的な感すらありました。

いちいちスマホで読み込むことにちょっと辟易しながら、それでも、その行為を結構楽しめた自分がいました。データ通信容量がすぐいっぱいになりそうだし、面倒くさくなってきたので、途中で再生するのを諦めてしまったけれど。

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地下におり、金庫室を通り過ぎると、小さな赤いランプで照らされた小部屋に行き当たります。

最初、薄暗くて何があるのかよく見えなかったのだけれど、目が慣れてくると、原爆の火の玉と、熱風にやられた人々が横たわる絵。ドミニク・パスカリーニの『巨大 火の玉』《Great Ball of Fire》という作品です。

折しも隣の金庫室では、エノラゲイから空撮された原爆投下の瞬間や、被爆直後の広島市街写真、熱風で変形したガラスや瓦などが展示されており、具体的なそれらの資料よりも、シンプルな装置と絵で構成されたこの作品から却って、爆発の下での人々の苦しみや土地に焼き付けられた凄惨な記憶が想起されました。

 

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会場を後にし、次の予定までの時間をつぶすために偶々入ったカフェで、偶然、原爆被爆者の方による語り部の会に遭遇しました。

間近で直接被爆体験をお聞きするのはこの時が初めてだったのですが、当時の状況を具に淡々と語られ、「今はこうして色々な人と出会えて平和を訴えられて幸せ」と笑うその方の笑顔の皺の奥深くには、言い尽くせない感情や痛みが隠されているように感じます。その場には外国人の参加者もいて、用意した英語の原稿で体験を語る被爆者の方もいらっしゃいました。最後は笑って記念撮影をピース姿で撮っていたけれど、原稿にならない、本当の感情や想いを、いつかお伺いしてみたい。

 

<Hiroshima Art Document 2017 概要>

会場 / 旧日本銀行広島支店

会期 / 2017年10月28日(土)〜11月8日(水)

開館時間 / 10時〜17時

入場無料

 

アーティスト /

ヴェロニク・ジュマール/ 仏

ヤングジェ・リー / 韓国、スウェーデン

ドミニク・パスカリーニ / 仏

N.E.T.(ジャン=フランソワ・ブランによる提案)/ 仏

Buiper Ware / 日本

 

主催 / Creative Union Hiroshima

共催 / 広島市

後援/ 広島県広島県教育委員会、Institut Francais Japon- Kyusyu、中国新聞社、

    NHK広島放送局

助成 / 芸術文化振興基金

協賛 / 三菱地所(株)

協力 / キヤノンマーケティングジャパン(株) 

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